前へおやすみなさい!
以前、あるイベントで列にならんでいた時の話。
結構な込み具合で、なかなか列は前に進まなかった。
そんな時、係員さんが声を張り上げてこう言ったのだ。
「前へおやすみなさい!」
空は青くて、太陽は燦然と輝いている。
まだ寝るには早い時間帯だ。
おやすみなさいと言われる筋合いはまだない。
僕は聞き間違いかと思い、再度その係員さんに耳を傾けた。
「前へおやすみなさい!」
いや、これは絶対におやすみなさい宣言している。
仕事中に高らかとおやすみなさいと言える度胸を僕は買いたいのだが、果たして本当にそう言っているのか、僕は訝った。
よく考えてみて欲しい。
そんな人見たことがあるだろうか。
仕事中に大声で「おやすみなさい」
そうだ、そんなわけない。
「前へおやすみなさい!」
いや、言っている。
それにしても「前へおやすみなさい」とはどういうことだろう。
「おやすみなさい」だけならわかるのだが、その前に「前へ」が付いている。
この余計な付属品が僕を惑わせた。
最終的な結論としては、おそらく敬礼的なものだったのではないか、ということだ。
「教官に礼!」とか、「前へならえ!」みたいなことなのではないだろうか。
つまり我々は「前へおやすみなさい!」!と言われたのならば、前の人におやすみなさいと言わなければならなかったのではないだろうか。
そう考えると、僕は係員さんに悪いことをした気になったのだが、さらに熟考を重ねると、それはそれで意味がわからないという極地に辿り着いた。
なぜ前の人におやすみなさいを言わなければならないのだ?
なんなのだ。
その三日後に、あれは「前へお進みください」と言っているのだと、突然閃いた。
閃きって大事なんだと再認識した。