渚のお釈迦サマー

実に適当なブログです。

三浦しをん「舟を編む」を読んでみた。

 未読の頃、タイトルからこの物語を推測する遊びを行なった。

 主人公は旅人で世界を小さな舟で旅をしている。しかし、舟は限界に達し航海の途中で壊れてしまう。

 手始めに舟底から海水が刹那的に溢れ出し、最終的には帆も、船体も崩れていく。

 主人公は焦った。そして見つけたのが毛糸。

 そうだ、編むんだ!

 舟を編むんだ!

 もちろんそんな話ではなかった。そんな話だとすれば、ほぼバッドエンドに違いない。トゥルーエンドまでの道筋が見えてきやしない。

 本作は、辞書作りに魂を燃やす人たちの物語である。辞書を航海に例え、舟を編んでいく。

 自分自身もそうなのだが、辞書の製作過程、そもそも辞書自体に注目する人はあまりいないと感じる。

 わーい、新作の辞書だー!すごい!こ、こんな言葉まで…これは次回作にも期待だな。

 とか。

 この辞書は自分に合わないな。やはりあの出版社のじゃないと駄目だな。

 とか、言ってる人を自分は見たことがない。

 この作品によって辞書作りとは、奥深く、一筋縄ではいかないことを知りぶるぶると身悶えてしまった。

 何より驚いたのは、自分が思っているよりも、壮大な時間がかかることである。

 本作では約十年の月日をかけて完成する辞書があり、それが物語の根幹となる。

 そして、何よりミスが許されないのだ。

 例えば、印字ミス。これは致命傷で、購読者の辞書への信頼を一気に失わせてしまう。完璧なはずの辞書に間違いは許されないのだ。

 そんな辞書作りに魅力的な登場人物たちが、どう向き合っていくのか。はたして。

 毛糸の舟では描けないストーリーが、ここにある。